エルデネ・ズー寺院の入口にある「輪廻の輪」の絵の説明について
この絵は、仏陀が説いた四つの聖なる真理と十二の縁起の教えに基づき、人々がどのように輪廻に縛られているかを示した、図による教えです。輪廻の輪は五層から成り立っています。輪を円形に描いているのは、輪廻に始まりも終わりもないことを表しています。
輪廻の輪の中心、最初の輪には「輪廻を縛るもの」として、豚・鶏・蛇の三つが描かれています。豚は無知を、蛇は怒り・恨み・憎しみを、鶏は欲望を象徴しています。鶏と蛇の尾が豚の口から出ているのは、欲望と怒りが無知から生じる、すなわち「我(自分)」という思いから生じることを示しています。
言い換えれば、なぜ怒りが生じるのかというと「自分をこうさせられた」という思いから怒りが湧くのです。なぜ欲望が生じるのかというと「自分に必要だ」という思いからであり、なぜ嫉妬や憎しみが生じるのかというと「この人は自分より優れてしまった」という思いからなのです。
その外側の第二の輪には、一方が黒、もう一方が白の輪が描かれています。白い側には上へ登っていく生き物が、黒い側には下へ這い、落ちていく生き物の姿が描かれています。これは、あらゆる行為には「善業」と「悪業」という二つの種類があることを示しています。善い行いを積めば白い側のように上へ、すなわち上位の世界へ行き、悪い行いを重ねれば黒い側の絵のように下位の世界へ落ちていくという意味を表しています。
内側の第三の輪には、輪廻の六つの世界が描かれています。すなわち、地獄・餓鬼・畜生・人間・阿修羅・天の六種類の存在です。言い換えれば、六道の衆生が示されています。善い生まれの三つの世界は、人間界・天界・阿修羅界であり、比較的幸福の多い世界です。悪い生まれの三つの世界は、地獄界・餓鬼界・畜生界であり、苦しみの多い世界です。つまり、生きている間にどのような行いをしたかによって、この六道のいずれかに生まれ変わり、輪の中で絶えず巡り続けることを示しているのです。
どれほどの罪や悪業を犯したかによって、このような苦しみに満ちた世界に生まれ、その結果として同じ程度の苦しみを味わうのだと、仏陀は警告し説かれました。地獄の苦しみは最も重い苦しみであり、二つに分けられます。すなわち、熱い地獄と寒い地獄です。そこでは絶え間なく苦しみを受け続けます。餓鬼の苦しみは、強欲であれば餓鬼に生まれるとされ、絶えず飢えと渇きに苦しみます。畜生の苦しみは、暑さに焼かれ、寒さに凍え、互いに食い合い、また肉食獣に捕らえられるなどの苦しみがあります。
この六つの世界の中で、自由と機会が備わった尊い人間の生は最も価値あるものとされています。人は生きている間に喜びも苦しみも味わいますが、人間の生には無知を超え、正しい知恵を得るための自由と機会が備わっているのです。そのことは、師から教えを聞いている人の姿によって表されています。
例えば、天の世界の存在は美しい容姿を持ち、宴を楽しみ、常に幸福に満ちているとされます。一方、阿修羅は互いに激しく争い、強大な力を持ちながらも、嫉妬や怒りに満ちた存在であるとされています。
人間の生を得ることはどういうことか。針に米を撒いて、その針の先に米粒が留まるほど難しいといわれます。人間の生を得ることはそれほど困難なのです。ナーガールジュナは次のように説いています。世界全体が水で満たされており、その深海には一匹の盲目の亀がいる。その亀は百年に一度だけ海面に浮かび上がる。そして海面には、真ん中に穴のあいた木の輪が漂っている。その盲目の亀が偶然その木の輪を見つけ、頭を穴に通すようなものだ、と。人間の生を得ることはそれほど難しいのです。さらに、人間として生まれたとしても、その生は非常に脆いものです。すなわち、死は容易に訪れるのです。「必ず生き続けて八十歳まで生きる」という保証は誰にもありません。死の条件が整えば、すぐに命は終わってしまうのです。
その外側には、輪廻の輪がどのように回っているかを十二の場面で描いています。
これらの描写は、人間の無知・欲望・行為がどのように輪廻の輪に縛られ、繰り返し生まれ変わることになるのかを示しています。仏陀の教えの核心は、この輪から抜け出す道は、知恵を得て、正しい行いを積み、欲望から離れることであるという点にあります。最も外側には、他の輪を噛み締めているワニ、すなわち「死の支配者」が描かれています。つまり、輪廻の世界全体が死を超えることはできないことを示しているのです。では、この輪からどうやって抜け出すのか。それは、無知に基づく悪業を断ち、欲望や怒りから離れることによって可能となります。その象徴として、輪の左上には右の方向を経典で指し示す仏陀が描かれています。その指し示す方向には、満月のように輝く澄んだ月が描かれており、それは「瞑想し、悟りを開き、輪廻の輪から抜け出し、永遠の悟りの境地に至りなさい」という意味を表しています。